医療法人のガバナンスを問い直すとき――なぜ今、この問題が重要なのか
「ガバナンス」という言葉を聞いたとき、医療の現場ではどのような印象を持たれるでしょうか。企業や行政の問題として遠い話のように感じる方もいれば、日々の診療に追われる中でなかなか向き合う余裕がないとおっしゃる医療従事者の方もいらっしゃいます。しかし、医療法人を取り巻く環境は近年大きく変化しており、ガバナンスの強化は「経営層だけの問題」ではなく、患者さんの安全や職員の働く環境、さらには地域医療の継続性に直結するテーマとなっています。
2017年の医療法改正により、医療法人に対するガバナンスの強化が法律上の義務として明確化されました。役員報酬の開示、理事会の適正な運営、監事機能の実質的な強化、そして社員総会の透明性確保が求められるようになっています。にもかかわらず、全国的に見ると制度の形式だけを整えて内実が伴っていない法人も少なくなく、厚生労働省や都道府県からの指導事例も報告されています。
私が理事長を務める医療法人鳳應会は、札幌・小樽を拠点に訪問診療・精神科・産業保健・介護など多領域にわたるサービスを展開しています。複数の事業体と多職種のスタッフを抱える中で、ガバナンスの仕組みをいかに実質的なものとして機能させるかは、日常の経営課題そのものです。本記事では、医療法人のガバナンスを構成する三つの柱――理事会・監事・社員総会――について、法令の根拠と実務の両面から丁寧に解説していきます。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の法人における法的判断や経営判断の代替となるものではありません。具体的な対応については、医療法務の専門家や所管の都道府県担当窓口にご相談ください。
医療法人ガバナンスとは何か――制度の全体像と法的根拠
医療法人ガバナンスの定義と目的
「ガバナンス(governance)」とは、組織が適切に機能するための統治・管理の仕組みを指します。医療法人においては、患者さんへの質の高い医療サービスを継続的に提供しながら、法令を遵守し、財務の健全性を維持するための組織的な意思決定・監督の体制を意味します。ガバナンスが機能することで、不正や経営の私物化を防ぎ、関係者全員が安心して関わることのできる法人運営が実現します。
医療法人のガバナンスは、医療法(昭和23年法律第205号)を主な法的根拠とします。特に、2015年と2017年の医療法改正を経て、医療法人の役員(理事・監事)の選任・解任手続き、理事会の設置義務、重要事項の決議プロセス、事業報告書等の作成・公告義務などが整備・強化されました。都道府県知事による指導・監督権限も強化されており、コンプライアンス違反に対するペナルティも現実的なリスクとして認識する必要があります。
ガバナンスを構成する三つの機関
医療法人(特に社団医療法人)のガバナンス構造は、大きく三つの意思決定・監督機関によって支えられています。第一が社員総会(法人の最高意思決定機関)、第二が理事会(業務執行の意思決定機関)、第三が監事(業務・財産の監査機関)です。それぞれが独立した役割を持ちながら相互に牽制し合う仕組みが、健全な組織運営の前提となります。
なお、財団医療法人においては社員総会に相当する機関が異なりますが、本記事では実数として多数を占める社団医療法人を主な対象として説明を進めます。また、特定医療法人・社会医療法人においては、さらに厳格な要件が設けられている場合があります。
ガバナンス強化の背景にある社会的要請
医療は公共性の高い事業であり、患者さんや地域住民の信頼を基盤として成り立っています。医療法人の不祥事や財務不正が社会問題化するたびに、透明性と説明責任の向上を求める声が高まってきました。厚生労働省が2017年改正の際に示した「医療法人のガバナンス改革」の方針においても、理事長への権限集中を防ぎ、多様な視点から監督できる体制の整備が重要目標として掲げられています。地域医療を担う法人として、この社会的要請に誠実に応えることは、組織の信頼性を高め、長期的な経営安定にもつながると考えます。
理事会の役割と責任――医療法人の「頭脳」として機能させるために
理事・理事会の法的位置づけ
医療法人(社団)には、理事3名以上と監事1名以上を置くことが医療法上の義務とされています(医療法第46条の5)。理事は社員総会において選任され、その中から理事長が選ばれます。理事会は、法人の業務執行に関する意思決定を行う機関であり、重要な事項については理事会決議を経ることが求められています。理事は単なる名目的な役職ではなく、法人の運営に対して積極的に関与し、必要に応じて意見を述べる義務を負います。
理事の善管注意義務(善良な管理者の注意をもって職務を行う義務)は、医療法および一般法人法の規定により課せられています。理事として選任された以上、「経営のことはよくわからない」「理事長に任せている」という姿勢は、法的責任の観点から許容されません。特に親族で固められた理事会や、形式上の構成にとどまっている場合は、ガバナンス上の脆弱性を抱えていることになります。
理事会で決議すべき重要事項
理事会が決議すべき主な事項には、以下のようなものが含まれます。予算・決算の承認、重要な資産の取得・処分、借入金の決定、役員報酬の方針、定款の変更に関する社員総会への上程、診療科・施設の新設・廃止などです。これらを理事長の独断で進めてしまうことは、法令違反に該当する可能性があるだけでなく、後々の経営紛争や行政指導の原因にもなりかねません。
理事会の開催頻度についても注意が必要です。定款に定める回数を下回らないことはもちろん、議事録を正確に作成・保管することが求められます。議事録は都道府県の監査時に提示を求められることがあり、形式的な記載(「全会一致で承認」のみ等)では議論の実態が確認できないとして指摘を受けるケースもあります。会議の内容を具体的に記録し、反対意見があった場合にはその旨も記載することが望ましいと考えます。
外部理事・第三者視点の導入
近年、ガバナンス強化の観点から、医療・経営・法律・会計などの専門的知見を持つ外部の有識者を理事に迎える動きが広がっています。特定医療法人や社会医療法人においては、外部の有識者を含むことが要件となっている場合もあります。外部理事の存在は、身内だけでは気づきにくいリスクを早期に発見し、客観的な視点で意思決定の質を高めることに貢献します。医療法人鳳應会においても、医療以外の専門領域の知見を経営に取り込むことの重要性を強く意識しています。
監事の役割と責任――形骸化させないための実践ポイント
監事とはどのような役割を担うのか
監事は、医療法人の業務と財産の状況を監査する機関です。医療法第46条の8に基づき、監事は理事の職務執行を監督し、財産の状況を調査する権限と義務を持ちます。問題を発見した際には理事会に対して報告を行い、必要に応じて社員総会の招集を請求することもできます。監事は理事と異なり、業務執行には関与せず、独立した立場から法人全体を監視する役割を担います。
医療法人においては、監事の独立性の確保が重要なポイントとなります。理事(理事長を含む)の親族や従属的な関係にある人物が監事に就任している場合、実質的な監査機能が損なわれる可能性があります。都道府県の立入検査においても、監事の選任状況と監査の実施状況は確認項目の一つとなっており、形式的な就任にとどまっている場合は改善指導の対象となることがあります。
監事が行うべき具体的な監査活動
監事の業務は、決算期における財務諸表の確認だけではありません。年間を通じて、理事会への出席と意見陳述、重要書類の閲覧・調査、職員への質問調査、会計監査人との連携などを継続的に行うことが求められます。監事監査報告書は社員総会に提出される公式な文書であり、形式的な「異常なし」の記載だけでは監査の実態を反映していないと見なされる場合があります。
また、医療法人の規模が大きくなるにつれて、会計監査人(公認会計士・監査法人)との連携が重要になります。一定規模以上の医療法人には会計監査人の設置が義務付けられており(医療法第51条の4)、監事はこの会計監査人と積極的に情報交換を行い、監査の質を高めることが期待されています。会計監査と業務監査の両面を有機的に結びつけることが、実効性のある監事機能の発揮につながります。
監事機能の強化に向けた実務上の工夫
監事が実質的に機能するためには、情報へのアクセスが保障されていることが大前提です。理事長や事務局からの情報提供が限定的であったり、重要な会議への出席が妨げられたりするような状況は、ガバナンス上の重大な問題といえます。定款や内規において、監事への情報提供義務を明記しておくことも有効な対策の一つです。さらに、監事が外部の専門家(弁護士・税理士・医療コンサルタント等)に相談できる費用を法人負担とする仕組みを設けることも、監査の実効性を高める観点から検討する価値があります。
社員総会の役割と責任――最高意思決定機関を正しく機能させる
社員総会とは何か、誰が「社員」なのか
社団医療法人における「社員」とは、一般的な意味の従業員(スタッフ)ではありません。医療法人の構成員として、法人の意思決定に参加する権利を持つ者のことを指します。出資者と同一とは限らず、定款の定めによって社員の範囲は異なります。社員総会は、この社員によって構成される最高意思決定機関であり、定款の変更・解散・合併・役員の選任など、法人の根幹に関わる重要事項を決議する場です。
社員総会は少なくとも年1回(通常は会計年度終了後)開催することが求められており、決算報告・事業報告の承認、役員の選任・解任、報酬の決定などが主な議題となります。社員は一人一票の議決権を持ちます(定款に別段の定めがない限り)。理事長であっても社員でなければ議決権はなく、逆に社員であれば立場にかかわらず議決に参加できます。この点は、株式会社の株主総会と似た性質を持っています。
社員総会運営における注意点
社員総会の形骸化は、医療法人ガバナンスの中でも特に問題となりやすい事項の一つです。招集手続きが定款の定め通りに行われているか、定足数を満たした状態で決議がなされているか、議事録が適切に作成・保管されているか――これらの基本的な手続きが徹底されていない法人が少なくありません。都道府県による実地検査では、過去数年分の社員総会議事録の提出を求められることがあり、不備が発見された場合は改善報告書の提出を求められる場合があります。
また、社員の構成についても定期的に見直すことが大切です。社員が実質的に理事長の意向に従うだけの形式的な構成となっている場合、社員総会がガバナンス機能を果たしているとはいえません。多様な視点を持つ社員が、実質的な議論に参加できる環境を整えることが、長期的な法人の健全性につながります。
社員総会と理事会の関係整理
社員総会と理事会は、それぞれ異なる権限を持つ独立した機関です。社員総会が「法人の方針を決める」機関であるのに対して、理事会は「その方針に基づいて具体的な業務執行を決定する」機関です。両者の権限の境界が曖昧になると、理事会の独断による重要事項の処理や、逆に社員総会への過剰な権限集中といった問題が生じることがあります。定款において各機関の権限と手続きを明確に規定し、実務でもその通りに運用することが、健全なガバナンスの基本です。
医療法改正の動向とコンプライアンスの最前線
2017年医療法改正がもたらした変化
2017年の医療法改正(平成29年法律第57号)は、医療法人のガバナンスに関して大きな転換点となりました。主な改正ポイントとして、役員等の氏名・報酬の事業報告書への記載義務化、医療法人間の合併・分割手続きの整備、持分なし医療法人への移行促進、社会医療法人の認定要件の明確化などが挙げられます。特に役員報酬の開示は、法人経営の透明性を高める観点から重要な意味を持っています。
また、都道府県への報告義務(事業報告書・財産目録・貸借対照表・損益計算書等)の充実化も進められており、一定規模以上の医療法人はこれらの書類をウェブサイト等で公表することが義務付けられています。地域住民や患者さんが医療法人の経営状況を確認できる環境の整備は、説明責任の観点から重要な前進といえます。
コンプライアンス体制の構築と内部通報制度
ガバナンス強化の実効性を高めるためには、法令遵守(コンプライアンス)の仕組みを組織全体に根付かせる必要があります。医療法人においては、医師法・医療法・介護保険法・個人情報保護法・労働関連法規など、関係する法律が多岐にわたります。これらすべてを理事長や管理者だけが把握するのは困難であり、各部門の責任者が法的義務を理解し、日常業務の中でコンプライアンスを実践できる体制を整えることが求められます。
内部通報制度(公益通報者保護制度)の整備も、コンプライアンス体制の重要な柱の一つです。2022年に改正公益通報者保護法が施行され、常時使用する労働者が300人を超える事業者には内部通報窓口の設置・体制整備が義務付けられました。医療法人においても、職員が不正や問題を安心して報告できる環境を整えることは、早期発見・早期対応の観点から非常に有効と考えられます。
行政指導・監査への対応準備
都道府県は医療法に基づき、医療法人に対して定期または随時の実地検査を行う権限を持っています。検査では、財務諸表・議事録・役員名簿・資産台帳・契約書類などの書類確認と、担当者へのヒアリングが行われます。指摘事項に対しては改善報告書の提出が求められ、是正が図られない場合には業務改善命令や役員解任請求といった行政処分に至る可能性もあります。日常的な記録管理と書類の整備が、行政対応の根幹をなすことを改めて強調しておきたいと思います。
参考:厚生労働省「医療法人の業務及び会計に関する事務処理基準(令和3年改訂版)」では、理事会・社員総会の議事録の記載要件、事業報告書等の様式について詳細なガイドラインが示されています。定期的に最新版を確認されることをお勧めします。
ガバナンス不全が招くリスク――実例と教訓から学ぶ
医療法人不正事例に見るガバナンスの欠如
過去に全国で報告された医療法人の不正事案の多くに共通するのは、理事長への権限集中、監事機能の形骸化、社員総会の不開催または形式的運営というガバナンス不全のパターンです。理事長が法人資産を私的に流用するケース、架空発注や水増し請求、関連企業への不当な利益供与など、発覚した際の社会的影響は患者さんや職員、地域社会に対して広く及びます。
特に問題となるのは、不正が長期間にわたって継続するケースです。内部からの告発がなければ発覚が遅れ、被害が拡大します。ガバナンス機能が適切に働いていれば、早期に問題を検知できた可能性があります。複数の監査体制と情報の透明性が、こうしたリスクを軽減するための現実的な対策となります。
後継者問題とガバナンスの空白
北海道を含む地方の医療法人において深刻化しているのが、後継者問題とそれに伴うガバナンスの空白です。理事長が長年にわたって一人で法人を支えてきた場合、後継者が育っていなかったり、理事会が実質的に機能していなかったりするケースが見受けられます。理事長に万一のことがあった際に、誰が・どのような手続きで・何を決定するのかが明確でなければ、法人の存続自体が危ぶまれる事態になりかねません。
事業承継・後継者育成とガバナンス整備は一体のテーマとして取り組む必要があります。後継者となる人材が理事として経験を積み、法人運営の意思決定プロセスを習得できる環境を早期に整えることが、持続可能な医療提供体制の確保につながります。
職員・患者さんの信頼を守るための透明性
ガバナンスの強化は、対外的な信頼性だけでなく、内部の職員に対する信頼確保にも直結します。経営情報が共有されず、意思決定のプロセスが見えにくい法人では、職員の不安やモチベーションの低下につながる傾向があります。適切な範囲での情報共有と、職員が意見を表明できる仕組みの整備は、医療の質の向上と職員の定着・採用力の強化にもつながると考えられています。医療人材の確保が困難な北海道においては、この視点は特に重要な経営課題といえます。
参考:日本医師会「医療法人ガバナンスガイドライン」(2018年)では、医療法人における理事会・監事・社員総会の実効的な運営に向けた指針が示されています。また、公益社団法人全国医学部長病院長会議の提言も参考になります。
医療法人鳳應会の取り組みと、地域の医療法人への提言
鳳應会が実践するガバナンスの考え方
医療法人鳳應会では、「病を治す」から「人生を支え抜く」というミッションのもと、地域の保健・医療・福祉の複合体として複数の事業体を展開しています。このような多角的な経営体制においては、各事業の自律性を確保しながら、法人全体としての統治を機能させることが求められます。グループ法人間の取引の透明性確保、役員間の役割分担の明確化、外部専門家(行政書士きくち事務所等)の活用による法務・ガバナンス支援の体制整備を、継続的に進めています。
私・近澤 徹は精神科専門医・産業医としての医療の専門性と、経営者としての役割を両立する立場にあります。医療の現場において患者さんの権利と尊厳を守ることと、法人経営において関係者への説明責任を果たすことは、根本的には同じ「信頼の構築」というテーマにつながっていると感じています。精神科領域においても、組織のガバナンスが崩れた環境下で働く職員のメンタルヘルスが悪化するケースを多く見てきました。組織の健全性は、そこで働く人々の精神的健康と切り離せない関係にあります。
北海道の医療法人が今取り組むべきこと
北海道は広大な土地に人口が分散しており、医療機関が地域の唯一の医療資源となっているケースも珍しくありません。そのような環境においては、医療法人の経営が安定して継続されることが、地域住民の命と健康に直結します。だからこそ、ガバナンスの強化は「義務だからやる」のではなく、地域医療を守り続けるための自発的な責任の発揮として捉えていただきたいと思います。
具体的な取り組みとして、まず着手しやすいのは書類の整備と記録の徹底です。理事会・社員総会の議事録、事業報告書類、役員名簿・報酬一覧などを最新の状態に保つことから始めてください。次に、監事機能の実質化を図ること。必要であれば外部の公認会計士や弁護士を監事あるいは専門アドバイザーとして活用することも有効な選択肢です。さらに、定款の記載内容が現状の運営と合致しているかを定期的に確認し、必要に応じて改訂することも重要な経営タスクです。
鳳應会グループへの相談・連携のご案内
医療法人鳳應会のグループには、行政書士きくち事務所(医療法務)が参画しており、医療法人の定款変更・各種届出・ガバナンス整備に関する実務サポートを提供しています。また、北海道・札幌エリアの医療法人や医療機関の経営者の方が、ガバナンスや組織運営に関してお悩みの際には、ぜひ当法人へご相談ください。医療の現場を知る医師の視点と、法務・経営の専門知識を組み合わせた実践的なアドバイスを提供できると考えています。
地域の医療を守ることは、一つの法人の努力だけでは限界があります。北海道の医療法人が互いに学び合い、ガバナンスの水準を高め合うことが、この地の医療の未来を支えることにつながると信じています。どうか一人で抱え込まず、専門家や同業者との連携を積極的に活用してください。
よくある質問
Q. 理事会を開催せずに理事長が単独で重要事項を決定してしまっていた場合、どのような問題がありますか?
A. 医療法上、一定の重要事項(不動産の取得・処分、多額の借入、定款変更の発議等)については理事会決議が必要とされています。理事会の決議を経ずに行われた決定は、手続き上の瑕疵(かし)として無効または取り消しの対象となる可能性があります。また、都道府県の立入検査で指摘を受け、改善報告書の提出を求められることもあります。過去の議事録を見直し、決議が必要な事項が適切に処理されていたかを確認することをお勧めします。
Q. 監事に適した人材はどのように選べばよいですか?
A. 監事には業務監査と財産監査の両面を担える人材が適しています。財務に関しては公認会計士・税理士、法律面では弁護士、医療業務面では医療コンサルタントや元医療従事者などが候補として挙げられます。最も重要なのは、理事長や理事と利害関係のない独立した立場であることです。親族や法人の従業員を監事に充てることは、独立性の観点から好ましくないとされています。外部の専門家を活用することで、監事機能の実効性を高めることができます。
Q. 社員(社員総会の構成員)は何人程度が適切ですか?
A. 法律上の最低人数は定款に定める数によりますが、一般的に3名以上が求められることが多いです。人数の多寡よりも、社員が実質的に法人の意思決定に関与できる多様性と独立性を持っているかが重要です。理事長の一族のみで構成された社員総会は、ガバナンス上の脆弱性を抱えていると見なされる場合があります。法人の規模や事業内容に応じた適切な構成を、専門家とともに検討することをお勧めします。
Q. 事業報告書等の公表義務はどのような法人に課されていますか?
A. 2015年の医療法改正により、負債合計額が50億円以上または収益合計が70億円以上の医療法人(「大規模医療法人」)には、財務諸表のウェブサイト等への公表が義務付けられています。また、社会医療法人・特定医療法人については別途の公表義務があります。それ以外の法人についても、都道府県への提出書類の作成義務はあり、任意での情報公開が法人の信頼性向上につながると考えられています。詳細は所管の都道府県担当部局にご確認ください。
Q. 医療法人のガバナンス整備をどこに相談すればよいですか?
A. ガバナンス整備には、医療法務に詳しい行政書士・弁護士、医療経営コンサルタント、公認会計士・監査法人などの専門家の支援が有効です。また、都道府県の医療課や医師会が相談窓口を設けている場合もあります。医療法人鳳應会グループでは、行政書士きくち事務所(医療法務)が医療法人の各種届出・定款整備・ガバナンス体制構築のサポートを提供しています。お気軽にご相談ください。
まとめ
医療法人のガバナンスは、患者さんへの安全な医療提供、職員が安心して働ける環境、そして地域社会からの信頼を守るための根幹をなす仕組みです。本記事の要点を以下にまとめます。
- 医療法人のガバナンスは理事会・監事・社員総会の三機関が相互に牽制し合う仕組みであり、それぞれが独立した役割と責任を担う。
- 理事会は業務執行の意思決定機関として、重要事項の決議・議事録の適切な作成・保管を徹底することが求められる。
- 監事は独立した立場から業務・財産を監査する機能を持ち、形骸化を防ぐために外部専門家の活用と情報アクセスの保障が重要となる。
- 社員総会は法人の最高意思決定機関であり、開催手続きの適正化と多様な構成員による実質的な議論が健全なガバナンスの前提となる。
- 2017年の医療法改正をはじめとする法令の動向を把握し、コンプライアンス体制の継続的な整備と書類管理の徹底が求められる。
- 北海道の地域医療を守る観点から、ガバナンス強化は義務を超えた地域への責任の発揮として主体的に取り組む意義がある。
医療法人鳳應会・近澤 徹は、地域医療の担い手として、ガバナンスの実質的な強化に継続して取り組んでまいります。定款の見直し・理事会運営の改善・監事機能の強化など、ガバナンスに関するお悩みや疑問がございましたら、医療法人鳳應会グループまでお気軽にご相談ください。共に、北海道の医療の未来を支える組織づくりに取り組んでいきましょう。