後継者がいない——今、北海道の医療機関で何が起きているのか

「院長が体調を崩してから、外来の予約が取れなくなった」「長年通っていたかかりつけ医が突然閉院した」——北海道の地域の中で、こうした声を耳にする機会が増えています。これは単なる個々のクリニックの問題ではなく、地域医療の存続そのものに関わる構造的な課題です。

厚生労働省の調査によれば、2022年度に廃業・休業した診療所は全国で約6,000件に上り、そのうち後継者不在を理由とするケースが相当数を占めていると推計されています。北海道においては、人口減少と広大な地理的条件が重なり、一つの診療所が担う医療圏は都市部と比較にならないほど広く、廃院が即座に「医療空白地帯」の発生に直結します。

私が理事長を務める医療法人鳳應会でも、札幌・小樽エリアで訪問診療や在宅医療を展開する中で、地域の医師仲間から「後継者が見つからない」「子どもは医師にならなかった」「いつ辞めるべきか迷っている」という相談を受けることが増えました。こうした現実を前にして、医療機関の事業継承は、もはや「将来の課題」ではなく「今すぐ取り組むべき喫緊の経営課題」です。

本コラムでは、事業継承の主な選択肢である親族継承・医療M&A・法人間統合の三つの方向性を整理し、それぞれのメリットと注意点、そして成功のために必要な準備について、できる限りわかりやすくお伝えしていきます。医院を守りたいと考えているすべての先生方、そして地域の医療が続いてほしいと願う患者・家族の皆さんにも、ぜひお読みいただければと思います。

医療機関の「事業継承」とは何か——一般企業と何が違うのか

医療法人特有の制約が事業継承を複雑にする

一般的な企業の事業継承では、株式の譲渡や合併・買収によって経営権を移転することができます。しかし医療機関、とりわけ医療法人の場合は、医療法という特別の法律によって厳しく規制されており、単純に「売買する」という概念が成り立ちません。医療法人の出資持分(旧来の持分あり法人)や基金(持分なし法人)の取り扱い、理事長の資格要件(原則として医師または歯科医師)、都道府県への各種届出・認可など、クリアすべきハードルが多重に存在しています。

個人経営のクリニック(個人開設の診療所)の場合は医療法人ほどの制約はありませんが、医師免許を持つ後継者がいなければ診療行為自体を引き継ぐことができません。また、土地・建物・医療機器・スタッフの雇用関係・患者との信頼関係など、「目に見えない資産」も含めた包括的な引き継ぎが求められます。こうした特殊性が、医療機関の事業継承を一般企業のそれよりもはるかに複雑にしている要因です。

事業継承の三つの主な選択肢

医療機関が事業継承を検討する際の主な方向性は、大きく三つに整理されます。第一は親族継承(子や親族の医師に引き継ぐ)、第二は医療M&A(第三者の医師や医療法人に譲渡・吸収してもらう)、第三は法人間統合(複数の医療法人が合併または業務連携で一体化する)です。それぞれに適した状況と、逆に向かない状況があります。

重要なのは、「どの方法が優れているか」ではなく「自院の状況と地域のニーズに最も合った方法はどれか」を見極めることです。そのためには早期からの情報収集と、専門家を交えた客観的な検討が不可欠です。

事業継承を早く始めるべき理由

中小企業庁の調査では、事業継承の準備期間として平均5〜7年が推奨されています。医療機関の場合も同様で、後継者候補の育成・院内の財務整理・物件や設備の評価・患者・スタッフへの説明と移行——これらすべてを適切に行うには、少なくとも5年以上の準備期間が理想的です。「まだ早い」と思っているうちに健康上の問題や家族の状況変化が重なると、急いで動かなければならなくなり、条件の悪い選択肢しか残らないということも起こり得ます。

親族継承——最も自然な継承形態とその現実

親族継承が選ばれる理由と強み

医療機関の事業継承において、歴史的に最もポピュラーな形態が親族継承、特に子どもへの継承です。院長が培ってきた診療方針・地域との信頼関係・医院の文化を継続しやすく、スタッフや患者にとっても「先生の息子さん(娘さん)が継いでくれた」という安心感が得られます。また、法人の理事会や都道府県への届出においても、比較的スムーズに手続きが進む傾向があります。

財産の承継という観点からも、持分あり医療法人の場合は出資持分の相続・贈与という手段が使えます。ただし、出資持分の評価額が高額になるケースでは相続税・贈与税の負担が問題となるため、計画的な対策(持分なし法人への移行、暦年贈与の活用等)が必要です。この点については、医療に詳しい税理士・行政書士との連携が重要です。

親族継承が抱える構造的な課題

しかし現実には、親族に医師がいない、または医師であっても「親の医院は継がない」という選択をするケースが増えています。医師の働き方が多様化し、大学病院や民間病院への就職、専門医取得後の都市部定住、あるいはワークライフバランスを重視した選択など、子どもが必ずしも地元の診療所を継ぎたいと思うわけではありません。また、継ぎたい意思があっても、専門科目が異なる(内科の親と整形外科専門の子など)場合は診療内容の継続が難しいこともあります。

さらに、親子間での権限移譲の難しさも見逃せません。長年院長として君臨してきた親が経営から完全に退くことへの抵抗感、逆に子側からすれば「なかなか任せてもらえない」というジレンマは、医療機関の親族継承において非常によく聞かれる問題です。円滑な継承のためには、段階的な権限移譲のスケジュールを書面で明確にしておくことが有益と考えられています。

親族継承を成功させるポイント

親族継承を成功させるためには、まず早期からのオープンな対話が不可欠です。「いつ頃継いでほしいか」「どのような医院にしていきたいか」「財産の分配はどうするか」——これらのテーマを、家族間で忌憚なく話し合える環境をつくることが第一歩です。また、後継者候補が他院での勤務経験を積みながら段階的に自院に関与するという「副院長期間」の設置も、スムーズな移行に有効と言われています。

医療M&A——第三者承継の仕組みとリアルな実態

医療M&Aとはどのようなものか

医療M&Aとは、後継者がいない医療機関を、外部の医師・医療法人・投資家などに譲渡する形態の事業継承です。近年、医療M&Aを専門に扱うコンサルティング会社・仲介会社が増加しており、マッチングのプラットフォームも整備されてきました。2020年代に入り、北海道を含む地方の診療所・クリニックを対象にした医療M&Aの件数は年々増加傾向にあると報告されています。

手続きの面では、個人開設クリニックの場合は「事業譲渡」という形が取られることが多く、建物・医療機器・スタッフの雇用・患者への引き継ぎをパッケージとして譲渡します。医療法人の場合は「出資持分の譲渡」や「理事長交代」を伴う形となり、都道府県知事への届出・認可が必要です。いずれも、一般企業のM&Aと異なり行政手続きが複雑であるため、医療法に精通した専門家の関与が重要です。

M&Aのメリットと注意点

医療M&Aの最大のメリットは、親族に後継者がいなくても診療を継続できる点です。院長にとっては、長年育ててきた医院と患者・スタッフを守ることができ、場合によっては譲渡対価(売却益)を得ることもできます。買い手側にとっては、既存の患者基盤・設備・スタッフを引き継げるため、ゼロから開業するよりもリスクが低いというメリットがあります。

一方で、注意すべき点も多々あります。買い手の診療方針が前院長と大きく異なる場合、患者やスタッフが離れてしまうリスクがあります。また、医療M&Aを仲介する会社の質には大きなばらつきがあり、適切な企業価値評価がなされないまま不利な条件で譲渡してしまうケースも報告されています。さらに、譲渡対価に係る税務処理(所得税・みなし配当課税等)は複雑であり、事前に専門家への相談が不可欠です。

医療M&Aの相談窓口を選ぶ際は、医療業界の専門知識と実績を持つ仲介会社・コンサルタントを選ぶことが重要です。一般企業のM&Aを専門とする会社が医療案件を手がけるケースもあり、医療法特有の制約への理解が不十分なまま手続きが進んでしまうリスクがあります。

地方の医療M&Aで押さえておくべき視点

北海道のような地方においては、医療M&Aで重要となるのが買い手候補の確保です。都市部と比べて医師の絶対数が少なく、診療所を購入・承継したいという医師が見つかりにくいケースもあります。こうした地域では、個人医師ではなく医療法人が複数のクリニックを傘下に収める「グループ化」の形でのM&Aが有力な選択肢となる場合があります。医療法人鳳應会のような地域密着型の複合医療法人が、地域の診療機能を引き受ける形での承継も、今後ますます重要性を帯びてくると考えられます。

法人間統合——持続可能な地域医療体制を構築するために

法人間統合の二つの形態

医療法人同士が連携・統合する方法には、大きく合併と業務提携(緩やかな連携)の二つがあります。合併とは、複数の医療法人が一つの法人に統合されることであり、吸収合併と新設合併の形態があります。医療法上、医療法人の合併には都道府県知事の認可が必要で、手続きは煩雑ですが、法的に一体化することで財務基盤の強化・スタッフの一元管理・設備の効率的活用が期待できます。

一方、業務提携は法人格を維持したまま、特定の機能(医師の相互派遣・電子カルテの共有・採用・研修の共同実施など)を協力して行う形態です。合併ほどの手続きは必要なく、まずここから始めて関係を深めていくという段階的アプローチを取ることも可能です。厚生労働省も「地域医療連携推進法人」という制度を設けており、複数の医療法人が一つの傘のもとで連携できる仕組みを整備しています。

法人間統合が有効なケース

法人間統合が特に有効に機能するのは、単独では持続困難な小規模医療機関が複数存在し、それぞれが異なる専門性や機能を持っている場合です。たとえば、訪問診療が強い法人と外来診療が充実した法人が統合することで、より包括的な在宅・外来ケアを患者に提供できる体制が生まれます。また、スタッフの採用コストや医療機器のリース費用などを統合によって分担することで、財務的な持続可能性が高まります。

日本医師会の調査では、病院・診療所の経営が困難になる最大の要因として「医師・看護師の確保難」と「患者数の減少」が挙げられており、統合によってこれらの課題を緩和できる可能性があります。法人間統合は単なる「経営合理化」ではなく、地域の医療の質を守るための積極的な戦略として捉えることが重要です。

統合における文化的・人的摩擦への対処

法人間統合で最も難しいのが、組織文化や診療方針の違いによる摩擦です。長年それぞれの法人が積み上げてきた「やり方」「慣習」「スタッフの働き方」が、統合後に衝突するケースは珍しくありません。こうした問題を最小化するためには、統合前の段階から双方の経営層・スタッフが十分にコミュニケーションを取り、理念・ビジョンの共有を丁寧に行うプロセスが不可欠です。また、統合後の一定期間は「移行期間」として段階的に業務を統合していく設計が推奨されます。

後継者問題が地域医療に与える深刻な影響

「医療空白地帯」発生のリスク

後継者が見つからないまま医療機関が閉院すると、その地域では「医療空白地帯」が生じます。特に北海道のような広大な地域では、次の診療所まで車で1時間以上かかることも珍しくなく、高齢者・障害者・免許を持たない住民にとって医療アクセスが著しく低下します。こうした状況は、慢性疾患の管理不良・救急搬送の遅延・精神的孤立の増加など、複合的な健康被害をもたらす可能性があります。

Lancet誌をはじめとする国際医学誌の研究でも、医療アクセスの低下が死亡率や入院率の上昇と関連することが繰り返し示されており、地域の医療機関を存続させることは公衆衛生上の重大な課題であると言えます。事業継承の問題は、医師個人の引退計画にとどまらず、地域社会全体の健康と直結しています。

在宅医療・介護への波及効果

在宅医療の観点からも、かかりつけ医の閉院は深刻な影響をもたらします。在宅療養中の患者にとって、訪問診療を担う医師が変わることは大きなストレスであり、病状の悪化や緊急入院のリスクが高まる場合があります。また、閉院したクリニックが訪問診療を担っていた場合、その患者を引き受ける医療機関を早急に確保する必要がありますが、地方では受け入れ先が限られることも多いのが現実です。

介護との連携という観点でも、特定のクリニックが地域のケアマネジャーや介護施設と密な関係を築いていた場合、閉院によってその連携ネットワークが断ち切られてしまいます。地域包括ケアシステムの維持という視点からも、医療機関の事業継承は地域全体で取り組むべき課題です。

若手医師の地域定着と事業継承の関係

後継者問題の根本的な解決には、若手医師が地域に定着する環境づくりが欠かせません。医師が地方で働き続けることを選べるよう、魅力的なキャリアパス・適切な処遇・働き方の柔軟性・専門性向上の機会を地域の医療機関が提供できるかどうか、これが長期的な後継者確保に大きく関わります。事業継承を単なる「引き継ぎ」として捉えるのではなく、次世代の医師が働きたいと思える医療機関に変革する機会として活かすという発想が、持続可能な地域医療体制の構築につながります。

事業継承を成功させるための具体的なステップと準備

まず「現状の見える化」から始める

事業継承の準備において最初に取り組むべきは、自院の現状を客観的に把握することです。具体的には、財務状況(損益・貸借対照表・借入残高)、患者数の推移と年齢構成、スタッフの雇用条件と勤続年数、建物・設備の状態と減価償却状況、医療法人であれば定款・出資持分の構成——これらを整理し、「自院の価値と課題」を明確にします。

財務の見える化に際しては、医療機関に詳しい税理士・公認会計士の協力が不可欠です。また、クリニックの「のれん」(患者基盤・ブランド・地域での信頼性)の評価は数値化が難しいものの、M&Aや統合の場面では重要な要素となります。こうした無形資産の整理と言語化も準備段階で行っておくことをおすすめします。

専門家チームを早期に編成する

医療機関の事業継承は、医師一人・家族だけで判断・実行できるものではありません。多職種の専門家チームを早期に組成することが成功の鍵です。必要な専門家としては、医療専門の税理士・公認会計士(税務・財務評価)、医療法に精通した弁護士または行政書士(法的手続き・契約書作成)、医療M&A専門のコンサルタント(マッチング・交渉支援)、そして必要に応じて社会保険労務士(スタッフの雇用継続手続き)が挙げられます。

医療法人鳳應会グループでは、行政書士きくち事務所と連携し、医療法務に関するサポートを提供しています。事業継承に関する法的手続きや定款変更、都道府県への届出など、医療機関特有の法務ニーズに対応できる体制を整えています。

後継者候補・買い手との関係構築と移行期間の設計

後継者候補が決まったら、段階的な権限移譲の計画を立てることが重要です。急激な引き継ぎはスタッフ・患者に不安を与えます。まず副院長として参画してもらい、半年〜1年かけて診療・経営の両面を学びながら徐々に主導権を移していく、というスケジュールが一般的です。移行期間中は前院長も関与を続け、患者・スタッフが新体制に慣れるための「橋渡し期間」を十分に設けることが望ましいと考えられます。

また、患者・スタッフへの告知のタイミングと方法も慎重に検討する必要があります。特に長期通院患者への個別の丁寧な説明、スタッフへの雇用継続の確約と新体制でのキャリアパスの提示——これらは継承後の診療継続率・スタッフ定着率に大きく影響します。

医療法人鳳應会の取り組みと、地域の先生方へのメッセージ

地域医療を「守り続ける」という責任

医療法人鳳應会は、「病を治す」から「人生を支え抜く」という理念のもと、札幌・小樽を中心に訪問診療・在宅医療・精神科医療・介護・産業保健と多領域にわたるサービスを展開してきました。この取り組みの根底にあるのは、地域の医療がいかなる状況においても継続されなければならないという強い信念です。

少子高齢化と医師不足が深刻化する中で、私は理事長として、自法人の経営継続だけでなく、地域全体の医療機能の維持に責任を持つべきだと考えています。そのため、閉院を検討している地域の先生方との対話、在宅医療機能の移管・統合に関する相談、そして若手医師が地域で活躍できる環境づくりに、積極的に取り組んでいます。

鳳應会が実践している「承継型連携」のモデル

当法人では、地域の診療所が持つ在宅医療機能を段階的に引き継ぎながら、閉院前後も患者が医療の継続を受けられる「承継型連携」のモデルを実践しています。具体的には、閉院予定の診療所の患者リストを共有いただき、訪問診療の引き継ぎを円滑に行う体制を整えることや、閉院後も旧患者がかかりつけを失わないよう連絡窓口を設ける取り組みです。また、精神科・産業医・美容医療・オンライン診療といった複合的な機能を持つ当法人グループとの統合によって、従来の診療所が提供できなかったサービスを患者に届けることも可能になります。

事業継承は「終わり」ではなく、地域医療の新しい「始まり」です。長年地域に貢献してきた先生方の医院と患者を守りながら、次の世代に医療をつなぐ——その橋渡しのお手伝いを、私たちは誠実に行いたいと考えています。

まず一歩、相談から始めてください

「具体的に動き出すにはまだ早い」「何から相談すればいいかわからない」という先生方も、まずは情報を集めることから始めてみてください。事業継承の検討において早すぎるということはありません。当法人では、地域医療の継続を支援するための個別相談を受け付けております。医院の状況や希望をお聞きした上で、親族継承・M&A・法人間統合のいずれが最適かについて、医療経営の観点からご一緒に考えることができます。北海道の地域医療を守るために、ぜひご相談ください。

参考:厚生労働省「医療施設調査」(2022年度)/ 日本医師会「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」/ 中小企業庁「事業承継ガイドライン」/ Lancet "Access to primary care and hospital admissions" 2020

よくある質問

Q. 医療法人の事業継承と個人クリニックの事業継承は、どのように異なりますか?

A. 最大の違いは、医療法人には法人格があり、その継承には都道府県知事への届出・認可が必要な点です。個人クリニックの場合は法人格がなく、「事業譲渡」の形で設備や患者情報などを引き継ぐことが一般的です。医療法人の場合は理事長の変更・出資持分の移転など複雑な手続きがあるため、医療法に詳しい専門家への早期相談が特に重要です。また、持分あり法人と持分なし法人では税務処理も異なります。

Q. 後継者がいない場合、M&Aと廃院どちらを選ぶべきですか?

A. 患者・スタッフ・地域医療の継続性を考えれば、まずM&Aや法人間統合による承継を検討することが推奨されます。廃院の場合、患者は新たな医療機関を自力で探す必要があり、特に高齢者や慢性疾患を持つ方には大きな負担となります。M&Aの成立には時間がかかる場合もあるため、閉院を検討し始めた段階で早めに相談を開始することが重要です。

Q. 事業継承の準備はいつ頃から始めればよいですか?

A. 一般的には、目標とする引退・継承の時期から少なくとも5年前、できれば7〜10年前からの検討開始が推奨されています。財務整理・後継者探し・法的手続き・スタッフへの説明・患者への移行——これらすべてに時間がかかるためです。「まだ先の話」と思っているうちに健康上の理由で急遽対応が必要になるケースも少なくないため、早期の情報収集と専門家相談をお勧めします。

Q. 医療M&Aで売り手となる場合、どのくらいの対価が得られますか?

A. 譲渡対価は医院の規模・収益力・立地・患者数・設備の状態・ブランド力など、多くの要素によって大きく異なります。一般的に、年間営業利益の数倍程度を目安とした評価が行われることが多いですが、統一された算定基準はなく、専門の医療M&A仲介会社や公認会計士による適正な企業価値評価が必要です。また、医療法人の場合は持分の評価方法が複雑であるため、税務面の専門家との連携も欠かせません。

Q. 法人間統合を行う場合、スタッフの雇用はどうなりますか?

A. 法人間統合(合併)の場合、原則として既存スタッフの雇用は継続されます。ただし、給与・勤務条件・就業規則などが統合先法人のものに変更される場合があり、事前に丁寧な説明と合意形成が必要です。雇用条件の変更については労働法上のルールに従う必要があり、社会保険労務士を交えた手続きが推奨されます。スタッフが安心して新体制に移行できるよう、十分な説明期間と個別面談の機会を設けることが、継承後の職場の安定につながります。

まとめ

  • 医療機関の事業継承は「将来の課題」ではなく、今すぐ準備を始めるべき喫緊の経営課題であり、理想的には引退の5〜10年前から検討を開始することが望ましいとされています。
  • 主な継承方法は「親族継承」「医療M&A」「法人間統合」の三つであり、それぞれにメリットと注意点があるため、自院の状況・地域のニーズ・後継者の有無に応じた最適な選択が重要です。
  • 医療法人の継承は医療法による厳格な規制を受けるため、医療専門の税理士・弁護士・行政書士・M&Aコンサルタントなど多職種の専門家チームを早期に組成することが成功の鍵です。
  • 後継者不在による閉院は、地域の「医療空白地帯」発生や在宅・介護ネットワークの断絶につながるため、事業継承は医師個人の問題にとどまらず地域社会全体の課題として捉えることが重要です。
  • 医療法人鳳應会では、閉院・継承を検討する地域の先生方との相談・連携を積極的に受け付けており、承継型連携モデルを通じて患者・スタッフを守りながら地域医療の継続を支援しています。
  • 事業継承は「終わり」ではなく「地域医療の新しい始まり」です。まずは一歩、専門家や連携可能な医療法人への相談から踏み出してみてください。

医院の未来についてご不安やご質問がある先生方、あるいは「地域の診療所が閉院してしまいそうで心配」という患者・家族の皆さまも、まずはお気軽に医療法人鳳應会へご相談ください。北海道の地域医療を守り続けるために、私たちは皆さまのお力になりたいと考えています。