あなたの「かかりつけ医」は、10年後もそこにいますか?
「いつもお世話になっている先生が、来年で閉院するらしい」——私のもとにも、こうした相談が年々増えています。北海道で在宅医療・精神科医療・訪問診療を展開する中で、地域の医師が一人また一人と現場を離れていく現実を、私は日々肌で感じています。
2023年に厚生労働省が公表した医師需給の推計によれば、2036年頃には医師の総数は需要を上回る見通しであるとされています。しかしこの数字には大きな落とし穴があります。全国平均として「余る」とされる医師の多くは、都市部の特定診療科に集中しており、地方の総合診療・在宅医療・精神科・救急の現場では依然として深刻な不足が続いているのです。
北海道は面積が日本の約22%を占めながら、人口は約520万人(2023年推計)。二次医療圏によっては医師一人が数十キロ四方の診療を担う地域もあります。「地域医療崩壊」は、遠い将来の話でも、誰か別の地域の話でもありません。今、この瞬間に進行中の問題です。
このコラムでは、医師不足・偏在問題の構造的背景を整理した上で、現場に立つ医師として、そして医療法人を経営する立場から、現実的かつ具体的な解決の方向性をお伝えしたいと思います。
数字で見る医師不足の実態——北海道と全国の現状
医師偏在指数が示す格差の深刻さ
厚生労働省は2019年から「医師偏在指数」を導入し、都道府県・二次医療圏単位での偏在状況を可視化しています。この指数は、人口・年齢構成・性別・受療行動などを補正した上で、地域の医師密度を比較するものです。北海道の医師偏在指数は全国平均を下回る地域が多く、特に道北・道東・道南の二次医療圏では「医師少数区域」に指定されている地域が複数存在します。
2020年の医師・歯科医師・薬剤師統計(厚生労働省)によれば、人口10万人対医師数が全国平均(246.7人)を下回る都道府県は依然として多く、北海道全体では平均的な水準にあるように見えても、実態は札幌市に集中し、郡部では著しく少ない構造になっています。この「平均値のマジック」が政策議論を歪めてきた側面があることを、まず認識する必要があります。
診療科別偏在——精神科・救急・産科の危機
医師不足は総数だけの問題ではなく、診療科別の偏在も極めて深刻です。精神科医療においては、精神科専門医の約7割が三大都市圏に集中しているとの調査報告があります(日本精神神経学会 2022年)。北海道においても、精神科を標榜する診療所・病院の多くが札幌・旭川に集中しており、道内各地では精神科受診までに数週間〜数ヶ月の待機が生じる地域も珍しくありません。
産科・周産期医療の偏在も深刻で、分娩可能な施設が車で2〜3時間圏内に一か所しかないという地域が北海道には複数存在します。救急医療についても、北海道医師会の報告によれば、道内の二次救急輪番体制を維持することが困難になっている地域が増加しています。これらは「将来の課題」ではなく、今まさに解決を求められている喫緊の問題です。
高齢化と医師の高齢化という二重構造
さらに問題を複雑にしているのが、地域の医師自身の高齢化です。過疎地・郡部に残る医師の多くは60代・70代であり、後継者が育たないまま引退を迎えるケースが相次いでいます。地域に根ざした「かかりつけ医」が一人閉院するだけで、数百〜数千人の患者が行き場を失う現実がそこにあります。医師の高齢化と人口の高齢化が同時進行する中、地域医療の持続可能性はかつてないほど脅かされています。
なぜ医師は地方に行かないのか——構造的要因を読み解く
教育・研修制度がもたらす都市集中
2004年に導入された新臨床研修制度は、医師が大学病院以外の民間病院や市中病院でも研修を受けられるようにし、医師の多様な選択肢を広げる意図で設計されました。しかし結果として、多くの若い医師が研修先として都市部の病院を選ぶようになり、大学医局を通じた地方への医師派遣機能が弱体化したとも指摘されています。医師需給問題に関する検討会(厚生労働省 2019年)でも、この点は繰り返し議論されてきました。
若い医師が都市部を選ぶ理由は「楽だから」ではありません。多くの場合、指導医の充実、症例数の豊富さ、専門研修プログラムへのアクセス、そして家族の教育環境・生活環境を総合的に考慮した結果です。個人の選択を責めるのではなく、この構造そのものを変えるための政策介入が必要です。
収入・待遇格差と勤務環境の問題
地方勤務の医師に対するインセンティブが不十分であることも、偏在の一因です。現行の診療報酬体系では、地方の孤独な診療所と都市部の大病院とで、提供する医療の量・質・難度が大きく異なるにもかかわらず、報酬上の差異は限定的です。2024年度から段階的に施行が進む医師の働き方改革においても、地方の医療機関における当直・オンコール体制への配慮が不十分との声は現場から多く聞かれます。
また、地方の病院で勤務する医師が専門性を維持・向上させるためのコンテンツアクセスや学会参加の機会が、都市部と比較して格段に少ないという実態もあります。「専門医としてのキャリアを積みながら地方で働く」という選択肢が現実的に機能するよう、遠隔教育・オンライン学会・ICT活用による情報格差の解消が急務です。
医師の家族が抱えるライフスタイルの課題
医師本人だけでなく、配偶者・子どもの生活環境も地方勤務を難しくする要因の一つです。配偶者が医師・看護師・薬剤師など医療専門職である場合、地方では配偶者の職場確保が困難なケースがあります。子どもの教育環境、文化施設へのアクセス、親の介護への対応など、医師個人のキャリア以外の要素が地域選択に大きく影響することを、政策立案においても真剣に考慮すべきでしょう。
地域医療崩壊が引き起こす連鎖反応——医療・介護・経済への影響
受療行動の変容と疾患の重症化リスク
身近に医療機関がなくなると、住民は「少し様子を見よう」「病院が遠いから我慢しよう」という判断をしやすくなります。これは医学的観点からみると非常に危険な状況です。早期発見・早期治療が予後を大きく左右するがん・心疾患・脳血管疾患・糖尿病性合併症において、受診の遅れは直接的に死亡率の上昇や重症化につながります。BMJに掲載された複数の研究でも、プライマリケアアクセスの悪化と健康アウトカムの悪化に有意な相関関係が示されています。
精神科医療においても同様です。うつ病・統合失調症・認知症などは、早期介入によって症状の進行を遅らせ、社会生活機能を維持できる疾患です。しかし近くに精神科がなければ、不調を感じながらも何年もそのまま過ごす方が少なくありません。結果として、入院が必要な水準まで悪化してから初めて医療機関につながるというケースを、私自身の診療の中でも数多く経験してきました。
介護・福祉への波及と地域経済の疲弊
医師不足は医療分野だけにとどまらず、介護・福祉の現場にも深刻な影響を与えます。介護老人保健施設や特別養護老人ホームには配置医師が必要ですが、地方では医師確保が困難で施設の開設・維持ができないケースがあります。また、訪問診療を担う医師がいなければ、在宅療養を希望する高齢者が希望通りの療養環境を選べなくなります。
さらに、病院・診療所は地域の主要な雇用先でもあります。医療機関が閉院すれば、看護師・薬剤師・リハビリ職・事務職など多くの雇用が失われ、地域経済全体の縮小につながります。地方創生の観点からも、医療機能の維持は経済・産業・人口定着と不可分な関係にあることを理解する必要があります。
精神的・社会的孤立の深刻化
「いざとなれば病院に行ける」という安心感は、地域住民のメンタルヘルスを支える重要な社会的資源です。医療機関の消失は、単に物理的なサービスの喪失にとどまらず、地域コミュニティの心理的安全基盤の崩壊をも意味します。高齢者を中心に、医療へのアクセス不安が慢性的なストレスや孤立感を生み出し、うつ・認知機能低下・社会的引きこもりを促進するという悪循環が生じます。これは私が精神科医として特に強調したい視点です。
国・行政が取り組む医師偏在対策——その成果と限界
医師確保計画と地域枠制度の現状
厚生労働省は2019年から、各都道府県が「医師確保計画」を策定することを義務付けました。医師少数区域・医師少数スポットを指定し、医師を重点的に配置するための施策を推進する枠組みです。また、医学部の「地域枠」は、修学資金の貸与と引き換えに一定期間の地域勤務を義務付ける制度として、全国の医学部で拡大されてきました。
これらの施策は一定の効果を上げている部分もありますが、地域枠で確保された医師の多くが義務年限終了後に都市部へ転出するという課題も報告されています。制度の入口だけを整えても、地域に残り続けるためのキャリア形成環境・生活支援・コミュニティへの帰属感が伴わなければ、定着には限界があります。
遠隔医療・オンライン診療の活用拡大
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、オンライン診療の規制緩和が急速に進みました。2022年の診療報酬改定では初診からのオンライン診療が一部解禁され、2024年以降もさらなる活用促進が図られています。特に精神科・心療内科領域では、対面診療に準じた質のオンライン診療が提供可能であることが複数の研究で示されており、地理的アクセス障壁を低減する有効な手段として期待されています。
当法人が運営する「北海道オンラインクリニック」でも、道内の遠隔地に在住しながら精神科の専門的な診療を継続的に受けられる患者の方が増えています。距離の壁を医療DXが補う可能性は確実に広がっており、これを医師不足対策の重要な柱の一つとして位置付けるべきと考えます。
2024年医師働き方改革がもたらす新たな課題
2024年4月から施行された医師の時間外労働規制(いわゆる医師働き方改革)は、医師の健康保護という観点から重要な一歩です。しかしその一方で、地方の中小病院・診療所では当直・オンコール体制の維持がより困難になるという懸念も現実のものとなっています。時間外規制によって、限られた医師数で救急・夜間対応を維持することが構造的に難しくなり、輪番制の崩壊やER機能の縮小が起きている地域も報告されています。働き方改革と地域医療維持を両立させるためには、医師の絶対数を増やす取り組みと、業務のタスクシフト・シェアを同時に進めることが不可欠です。
現場から見えた解決の糸口——多職種連携とタスクシフトの実践
医師以外の医療職が担える役割の拡大
医師不足の解決策として最も即効性が高いのは、医師が「医師でなければできない業務」に集中できる環境を整えることです。2021年の医療法・医師法改正によって、タスクシフト・タスクシェアが法的に整備され、特定行為研修を修了した看護師・診療看護師(NP)・医師事務作業補助者などが医師業務の一部を担えるようになりました。
当法人の在宅医療・訪問診療の現場でも、訪問看護師・ケアマネジャー・薬剤師との密な連携によって、医師一人当たりがサポートできる患者数を安全に拡大する工夫を積み重ねています。多職種チームが情報を共有し、それぞれの専門性を最大限に発揮することで、医師が「診断・治療方針の決定」という本来の機能に集中できる体制が生まれます。
ICTを活用した診療情報共有と負担軽減
電子カルテの標準化・共有化、医療・介護連携ツールの導入は、多職種連携の質を高めると同時に医師の事務負担を軽減する効果があります。当法人でも、在宅患者の情報を医師・看護師・薬剤師・ケアマネジャーがリアルタイムで共有できるプラットフォームの活用を進めており、これによって電話連絡の往復や書類作成にかかる時間が大幅に削減されています。
また、AIを活用した医療文書の自動生成・診療補助ツールの導入も、今後の医師負担軽減において重要な役割を果たすと考えられています。こうした医療DXの推進は、医師が患者と向き合う時間を確保し、地方勤務の質を高めるための現実的な手段です。当法人グループのMedi Faceにおける精神科DXの取り組みも、こうした問題意識に根ざしています。
産業医・産業保健との連携による予防医療の強化
地域医療の負荷を長期的に軽減するためには、疾病を治すだけでなく、疾病を防ぐ「予防医療」の充実が欠かせません。産業医・産業保健師が企業の現場でメンタルヘルスや生活習慣病対策に積極的に関与することで、将来の医療需要を抑制することができます。当法人のZ産業医事務所でも、企業の健康経営支援と地域の医療機関との橋渡し役として、地域予防医療のインフラ整備に取り組んでいます。
地域医療を守るための社会全体の関与——患者・市民にできること
かかりつけ医を持つことの意義
地域医療の持続可能性を高めるために、患者・市民の側からできる最も重要なことの一つは、かかりつけ医を持ち、継続的な医療関係を築くことです。大きな病気になったときだけ病院に行くのではなく、日常的な健康管理・予防接種・定期検診を地域のクリニックで行うことが、地域医療の経営基盤を支えます。2024年度改定で導入された「かかりつけ医機能報告制度」も、この方向性を制度的に後押しするものです。
また、軽症の場合は大病院でなく診療所・クリニックを受診する「受療行動の適正化」も重要です。大病院の外来には本来、専門的・複雑な疾患の方が集中すべきであり、診療所が担うプライマリケアとの適切な役割分担が実現することで、医師の働き方の質と地域医療の効率性が高まります。
医療と地域コミュニティの関係再構築
地域医療を守ることは、地域そのものを守ることと同義です。医療機関が地域のコミュニティ活動・健康教室・認知症予防プログラムなどに積極的に関与し、地域住民との信頼関係を育むことが、長期的な医療機関の定着と発展につながります。医師や医療スタッフが地域の一員として認識され、生活・子育て・文化活動に参加できる環境が整うことで、地方勤務の魅力も高まります。
行政・自治体も、医師・医療従事者が地域に定着しやすいよう、住宅支援・教育環境整備・配偶者の就労支援など、生活面でのバックアップ策を積極的に整備することが求められます。医療政策は厚生労働省だけが担うものではなく、地方自治体・教育機関・企業・市民が協働して取り組むべき社会的課題です。
次世代の医療人材育成への投資
地域医療の長期的な解決には、次世代の医療人材育成への投資が欠かせません。医学生・研修医が地方での診療を「選びたい」と思えるよう、地方病院での研修プログラムの質を高め、指導体制を充実させることが重要です。また、医療に関心を持つ高校生・大学生が地域の医療現場を体験する機会を増やすことも、将来の地域医師確保に向けた種まきとなります。
当法人でも、医学生・研修医の見学・実習受け入れ、地域医療に関する講演・勉強会の開催を通じて、地域医療の魅力を次世代に伝える取り組みを続けています。医師一人の力は限られていますが、地域全体で医療の価値を育てていく文化を醸成することが、最も持続可能な解決策であると確信しています。
医療法人鳳應会が目指す地域医療の未来——近澤 徹からの提言
「病を治す」から「人生を支え抜く」へ
医療法人鳳應会は、「病を治す」だけでなく「人生を支え抜く」をミッションとして掲げ、訪問診療・在宅医療・精神科・介護・産業保健・医療DXを一体的に展開してきました。このアプローチは、まさに医師不足・偏在問題への一つの答えでもあります。医師一人が単独で抱え込むのではなく、多様な専門職・多様な提供形態が連携することで、より少ない医師リソースでより多くの患者の生活を支えることができると、私は実践の中で確信しています。
訪問診療では、患者が病院に来るのではなく医療が患者の元に出向きます。オンライン診療では、患者が遠くの病院に行かなくても専門的な精神科診療を受けられます。在宅ターミナルケアでは、患者が望む場所で最期を迎える権利を守ります。これらは単なるサービス提供の多様化ではなく、医師が地域の隅々まで届くための「医療の形の再発明」です。
医療DXと人的連携の両立が地域医療の鍵
私が特に強調したいのは、医療DXはあくまでも人的連携を補完するものであるという点です。テクノロジーが医師不足を完全に解決することはできません。しかし、電子カルテの共有・オンライン診療・AIによる診療支援・遠隔モニタリングといったデジタルツールが正しく活用されることで、限られた医師・医療従事者がより効率的・効果的に地域に貢献できる環境が生まれます。
当法人グループのMedi Face(精神科DX)や北海道オンラインクリニック(精神科オンライン診療)は、こうした思想のもとに生まれた取り組みです。DXの力で北海道全域の患者に精神科専門医療を届けることを目指しながら、地域の医療機関・支援機関との人的ネットワークを大切にすることを、これからも変わらず続けてまいります。
地域の皆さまへ——一緒に地域医療を守りましょう
地域医療崩壊を防ぐことは、医師や行政だけの仕事ではありません。地域に暮らす皆さまお一人お一人が、かかりつけ医を持ち、医療機関を適切に利用し、地域医療の価値を守るための当事者として関わっていただくことが、最も根本的な解決策だと私は信じています。
私自身、北海道大学医学部を卒業して以来、精神科医として・在宅医療医として・産業医として、この北海道の地域医療と向き合い続けてきました。「医療が届かない場所をなくしたい」という思いは、医療法人鳳應会を立ち上げた原点であり、今もすべての活動の根底にあります。地域の皆さまのご相談・ご質問を、いつでもお待ちしています。
医療法人鳳應会では、訪問診療・在宅医療・精神科オンライン診療・産業保健など、地域のニーズに応える多様な医療サービスを提供しています。医師不足の地域にお住まいで、受診先にお困りの方、在宅療養を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
本コラムは一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。お体の不調や精神的な悩みについては、必ず医師・医療機関にご相談ください。
よくある質問
Q. 医師不足が深刻な地域に住んでいます。定期的な診察を受けるにはどうすればよいですか?
A. まず、近隣の診療所・病院のかかりつけ医を確保することが第一歩です。お近くに診療所がない場合や、移動が困難な場合には、訪問診療・オンライン診療の活用が選択肢となります。特に精神科・内科系疾患については、オンライン診療での対応が広がっています。当法人の北海道オンラインクリニックでは、道内全域の患者様を対象に精神科オンライン診療を提供しておりますので、ご相談ください。
Q. 在宅医療・訪問診療はどのような方が利用できますか?
A. 訪問診療は、通院が困難な方(高齢・障害・慢性疾患・終末期など)を対象に、医師が定期的に自宅・施設を訪問して診察・治療を行うものです。「入院するほどではないが、外来通院が体力的に難しい」という方に特に適しています。在宅療養を希望される場合は、担当ケアマネジャーや地域包括支援センター、または医療機関の地域連携室にご相談いただくと、適切な訪問診療医を紹介してもらえることがあります。
Q. 精神科・心療内科が近くにない地域でも、メンタルヘルスの相談はできますか?
A. はい、可能です。2022年以降、精神科・心療内科のオンライン診療が大幅に普及しており、初診からオンラインで対応できる医療機関も増えています。うつ病・不安障害・不眠・発達障害など、幅広い精神科的問題に対してオンラインで専門的な評価・治療が受けられます。ただし、緊急性が高い場合や、対面での診察が必要と判断される場合は、速やかに医療機関への受診が必要です。まずはご相談いただき、最適な受診方法をご案内します。
Q. 医師偏在問題は今後改善されるのでしょうか?
A. 厚生労働省の推計では、医師の総数は2036年頃に需要に対して均衡に達すると見込まれていますが、地域・診療科別の偏在は自然には解消しないと考えられています。国・都道府県の医師確保計画、地域枠制度の拡充、オンライン診療・医療DXの推進、タスクシフト促進など、複合的な対策が組み合わさることで徐々に改善に向かうことが期待されますが、短期間での劇的な改善は難しい状況です。患者・市民・地域・行政・医療機関が協力して取り組むことが重要です。
Q. 地域医療に関わりたい医師・医療従事者が医療法人鳳應会に参加することはできますか?
A. はい、医療法人鳳應会では地域医療・在宅医療・精神科医療・産業保健・医療DXに志を持つ医師・医療従事者を広く歓迎しています。訪問診療医・精神科医・産業医・看護師など、様々な職種でのご参加が可能です。「北海道の地域医療を守りたい」という思いをお持ちの方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
参考資料:厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計(2020年)」/厚生労働省「医師需給分科会 報告書(2019年)」/日本精神神経学会「精神科医師の地域偏在に関する実態調査(2022年)」/北海道医師会「北海道における救急医療体制に関する報告(2023年)」/BMJ「Primary care access and health outcomes: a systematic review」
まとめ
地域医療崩壊と医師不足・偏在問題について、現場の実態と構造的要因、そして解決の方向性を整理してきました。以下に本記事の要点をまとめます。
- 医師の総数は増加傾向にある一方、都市部への集中が続き、北海道を含む地方では深刻な医師不足・偏在が継続している。特に精神科・救急・産科などの診療科別偏在は喫緊の課題である。
- 医師が地方に定着しない背景には、研修制度・診療報酬・生活環境・キャリア形成の構造的問題があり、個人の意識改革だけでは解決できない。政策・制度・環境整備の複合的なアプローチが必要である。
- 地域医療の崩壊は、疾患の重症化・介護力の低下・地域経済の疲弊・メンタルヘルスの悪化など、広範な社会的ダメージをもたらす。予防的・長期的視点での対策が求められる。
- タスクシフト・多職種連携・医療DX(オンライン診療・電子カルテ共有・AI活用)の推進により、限られた医師リソースで地域をカバーする体制の構築が現実的かつ有効な解決策となる。
- 患者・市民の側からも、かかりつけ医を持ち、受療行動を適正化し、地域医療の価値を守る当事者として関与することが地域医療の持続可能性を高める。
- 医療法人鳳應会は、訪問診療・在宅医療・精神科オンライン診療・産業保健・医療DXを組み合わせた複合的なアプローチで、北海道の地域医療を守るための取り組みを継続している。お困りのことがあれば、いつでもご相談ください。
地域医療の未来は、医師だけでも、行政だけでも、テクノロジーだけでも作ることはできません。地域に生きるすべての人が「自分ごと」として医療の問題に向き合い、支え合うことで初めて、「病を治す」から「人生を支え抜く」医療が実現します。医療法人鳳應会は、これからもその実現に向けて、北海道の地域医療の最前線に立ち続けます。